自然堂はりきゅう院の名前の由来⑤(おわり)

なぜ「はりきゅう」院なのか?

街中には〇〇鍼灸院、〇〇はり灸院、〇〇針灸院・・・様々な看板があります。その表現の背景にはなにがあるのでしょうか?
私は「針」という字を使っているところは中国的なやり方なのかな?と連想します。
「鍼」の旁(つくり)は感動の感にも使われているように心を表します。また「針」はいわゆる縫い針にも使うように道具としてのイメージが思い浮かびます。

鍼・針という言葉は「シン」と中国由来の音読みすることができます。
「シン」と聞いても真、新、信・・・いろいろ漢字が頭に浮かびますよね。
一方、灸は訓読みでは「やいと」、と読みますが現代で「やいと」で通じるのは一部の高齢者でしょうか。
一般的にはやはり「きゅう」と読む方が多いです。

日本的な鍼灸をしたくて開業しているので、できるだけ訓読みでひらがなにしたいという思いがありました。

「文字の文化ではなく、声の文化」を大切にしたい。

日本や海外の視覚障害者と関わっていた私にとってとても大切なことなのですが、日本的な鍼灸の中には江戸時代より視覚障害者が鍼灸あん摩を担ってきた歴史があります。ということは聴覚優位な世界観があります。(視覚障害者が鍼灸治療を担ってきたのは日本だけです。しかも視覚障害者の学校も世界ではじめて日本ではじまりました。)
よく使われる「気」という言葉の意味も中国とは違うようです。日本では目に見えない実体のない、つかめないものに「気」が付く言葉が多いです。

漢字というのは目がみえることを前提としています。言い換えれば中国は視覚(=見えること)優位とも言えます。

聴覚の世界を大事にしたい。
その瞬間瞬間の患者さんとのライブ感を大事にしたい。
理論ではない感情や感性を大事にしたい。
文字で紡がれ、目で見えるものが最高とされる理論化された医療ではなく、目の前の患者や私の心の声や音、空間や場を大事にしたい。


その為に日本的な鍼灸治療には「はりきゅう」がふさわしいだろう。目が見えなくとも漢字が見えなくとも聞けば意味が分かる。
また、私たちの資格は国家資格でもありますが、行政的には鍼灸マッサージ師ではなく「はり師、きゅう師、あんまマッサージ指圧師」と表記されます。それぞれの国家試験があるので、3つの国家資格を有していることにもなります。

言語学的にも日本語と中国語、英語はそれぞれの構造が違うのですが、そんなところでも日本的な名前を付けようと思いました。

海外生活の中で、私と現地の方の違いを毎日のように感じていました。
そんな中で日本人ってなんだろう?日本ってなんだろう?ということを自問自答していました。

こんな理由から「自然堂はりきゅう院」と名付けました。