韓国医学研修・体験ツアーinソウル

自然堂の五味です!
お休みをいただいて2025年7月11日(金)~13日(日)まで韓国・ソウルへ韓医学の研修へ行ってきました!
昨年の大邱(テグ)に続いて2回目の韓国、そしてソウル!
(テグの様子のブログはこちらから)
昨年の韓医学の衝撃を多くの鍼灸師に知ってもらいたくて企画し、あっという間に参加者は10名を超えました。
今回もとても充実した研修ツアーになりました。

座燻・お灸の体験

成田から仁川(インチョン)国際空港へ
仁川空港からお灸(座燻)の治療院へ
治療院を貸し切りにしてくれて、入り口には大きなポスターで「日本の鍼灸師の皆様ようこそ!」と歓迎。こういう韓国人のホスピタリティーが嬉しいですね!


座燻とは?

座面に穴があいている椅子に座ります。(ちなみに下着は履かない状態です)穴の下にはもぐさがあり、その煙と熱が陰部を温め、内臓も温めていきます。主に婦人科や冷え性に効果があると言われています。よもぎは江華島(カンファド)産の最高品質のヨモギから作られたもぐさを使用。ヨモギは古典文献の記載通り3年間乾燥させて熟成したものを使用していました。

仁川国際空港に到着!成田から2時間半
賑やかなソウル市内
日本語で「日本の鍼灸師の皆様」と歓迎のポスターまで用意してくれました。
カフェ風のお灸のお店 テラスもあります
熱心に仕組みを説明してくれています。椅子の下からお灸の熱と煙で陰部を温めます
韓国の伝統服でお灸を受けます
ベッドの下からお灸の熱、お腹に陶器のお灸のせて1時間、汗がびっしょりでます
よもぎを三角錐状にしたお灸(もぐさ)
韓国の最高品質を生み出す江華島のよもぎ畑
よもぎを3年かけてじっくり乾燥・熟成させます
なぜか、お灸の前にスイカとコリアン納豆を出してくれました・・・カリウムとビタミンB1の補給?

韓医大学病院の見学へ

今回のツアーの目的である慶熙(キョンヒ)韓医大学病院へ!
韓国の医師制度は2元制を取っています。
一つは西洋医学の医師、もう一つは伝統医学の医師、これを韓医師と呼びます。
韓医師になるのも西洋医師と同じように6年制の大学で学びます。
韓医師は韓医学と呼ばれる漢方(韓方)薬、鍼灸、推拿(手技療法)を行います。これらは西洋医師はできません。

韓医学では人を4つの体質に分ける「四象体質」(ししょうたいしつ)をベースとしています。

「四象体質」とは・・・今から約150年前に哲学者であり医学者でもあり韓医学の父とも呼ばれている李済馬(イジェマ)が創案した、漢方(中国由来)にはない韓医学の代表的かつ独創的な体質医学です。これは人の体質を「太陽人(たいようじん)」、「太陰人(たいいんじん)」、「少陽人(しょうようじん)」、「少陰人(しょういんじん)」の4タイプに分類することができるという理論で、原理も単純明快なことから、現代人が十分に納得して実生活にすぐ応用できる実践医学と考えられます。

韓医大学病院の正門
各科に分かれています
四象体質の像
顔面神経麻痺科の治療

ソウル薬令市場へ

「ソウル薬令市場(ソウルヤンニョンシジャン)」は韓国の代表的な韓方薬取引の中心地です。1960年代初め20店舗ほどだったこの地域の韓方薬市場が急成長し、それまで350年の伝統を誇っていた大邱薬令市を追い抜き、今では韓方医院と薬剤商、薬局など1000余りが集まっています。各種薬剤は産地からすぐ取り寄せられるため値段も安く品揃えも豊富です。

薬令市場の正面の門
薬を煮出すオブジェ
薬だけでは無く様々な食材が売っています

ソウル薬令市韓医薬博物館

薬令市場の中にあり、韓国の伝統韓医薬関連の遺物や韓方薬剤などの展示を行い、韓医薬文化を継承・保存・発展させるために設立しました。
特に子供が楽しめるようにゲームをしながら伝統医学を楽しめるように工夫しています。
韓国政府の次世代へ伝統医学を継承していこうという意志を感じました。

きれいな外観
様々な伝統医学の展示があります。
足湯
伝統的な家屋での韓方薬作りや野草採集の模型も展示されていました。

ヒル治療+舎岩鍼法の治療院へ

早くも3日目の最終日
今回の裏目的でもある「ヒル治療」を受けてきました!町中の雑居ビルの中にある個人の開業韓医クリニックです。

この日は私たちの出国時間に合わせて1時間早く治療院を開けてくれて対応してくれました。

ヒル治療はかつては全世界で行われていた治療方法で、日本でも昔は漢方薬局でヒルが売られていました。日本のイメージでは凝りのあるところにヒルを置き、悪い血を吸ってもらうという印象です。

こちらのクリニックでは医療用に育てられた(滅菌状態で飼育された)ヒルを欧州から輸入して使用していました。生理食塩水が満たされたプラスチックの容器の中には数匹のヒルが入っており、それをピンセットでつまみ上げて使用します。

翻訳アプリを使うと雑居ビルには様々なクリニックが入っている様子
ここからヒルを取り出します

まずはヒルが食いつきやすいように微少な出血をさせ、その上にヒルを置くのですが、活きのいいヒルとそうでないのもあります。私の場合はなかなか喰いつてくれずに、チューブにヒルを入れて出血部に押し当てて、さらに後ろからヒルを追い立てて出血部へ誘導し、無理矢理血を吸わせてました笑

ヒルをチューブにいれて無理矢理吸ってもらってます
最初はほんの少しチクッとします

ヒルがお腹いっぱいになるまで2時間くらいかかります。血を吸うと体が丸々と大きくなり、その後は自然と剥がれ落ちます。

ヒル治療で驚いたのは実はそのあと。
ヒルは唾液からヒルジンという抗血液凝固作用(血が固まらないようにする)のある物質を出し続けることで、延々と血を吸い続けることができます。これが、まる1日半以上出血し続けておりました。

ヒル治療は抹消の血流障害に効果があり、バージャー病やレイノー症状、壊疽手前の循環障害などに効果があることを報告してくれました。

この韓医の先生は「昔からある治療方法には何かしら意味がある。それを現代の価値観で無くしてしまうのは私の価値観にはない。周りから何かを言われようとも、エビデンスや論文などを構築している」と、信念をもってヒル治療を行っておりました。

熱心にヒル治療について説明してくれています
伝統医学の診察室らしく古典書籍に埋め尽くされています
こちらは韓薬の生薬棚
韓国では個人クリニックで韓薬を調合して処方するところが多い

舎岩鍼法(しゃがんしんぽう)とは?

こちらの韓医医院の鍼治療は「舎岩鍼法」と言われるやり方でおこなわれていました。
韓国に舎岩鍼法というやり方があることは知ってましたが、偶然にもこちらで行われているということでご講義もお願いしました。

舎岩鍼法は韓国伝統医学に根ざした鍼灸法で、17世紀頃の李氏朝鮮時代に一人の僧侶(法号「舎岩道人」)によって創始されたと伝えられます。

舎岩道人は山中の岩洞で13年にわたり鍼灸理論を研究し、その成果として「舎岩道人鍼灸要訣」を著しました。

舎岩鍼法の理論的特徴は、陰陽五行説と経絡・経穴理論を韓国独自の視点で発展させている点です。具体的は肘から先、膝から先の要穴を相生・相克関係で選穴します。日本の経絡治療にとても似てるな、と思いました。

日本の鍼灸師にも見慣れた陰陽の相生・相克関係の説明
ほかの患者さんが来始めている中、時間を惜しんで講義してくれました

最後に

韓国に来ると日本の伝統医学の現状と比べざるを得ません。
韓国では伝統医学・伝統食・美容を国家戦略として輸出する位の気持ちで取り組んでいます。私たちのような海外から来るツーリストに対しても、積極的に受け入れています。自国の伝統文化を大切にすると同時にメディカルツーリズムやヘルスツーリズムなど経済戦略も持ち合わせており、医療という側面の単視座で語られがちな日本と大きな違いです。
また、韓医師たちは熱心に誇りをもって仕事をしている姿は好感をもちました。

韓国だけではなく、世界的に中国、インド、タイ、ベトナム、インドネシアなどが伝統医学を保護する動きになっています。

日本はまずは何を大切にするのか。日本の伝統医学の魅力は何なのか?特徴は何か?を考える必要があると思います。