在宅現場から
患者宅へいつも通り伺うと、珍しく担当ケアマネさん、そのボス・ケアマネさんがいらっしゃいました。
新しく、往診Drがみえると言うことで顔合わせに来られたようでした。
私も良い機会だとばかりにDrや看護師さんと名刺交換させて頂きました。
ところが、ケアマネさん曰く「痛みやしびれが良くなってませんねえ…」とおっしゃいます。なんとなく、顔が厳しい(笑)
言外にこれ以上やっても意味が無いんじゃないか…と言われているようでした。
そりゃ、そうですよね、大事なご利用者様を私に紹介してくれて結果が出てないのですから。
患者さんは寝たきり状態で脊椎の変形も著しく、私としては当然時間がかかるものとの認識だったので、意外なコメントでした。
痛みやしびれが主訴ですから、これが改善できなければ確かに効果が無いと判断されかねません。
しかし、この3カ月間、良くなった事が沢山ありました。
治療開始後便通が毎日あり、浣腸を使わなくなったこと。
肩の挙上困難が改善し、寝返りが打てるようになったこと。
めまいが無くなった事。
足・股関節の運動時痛が無くなった事。
何より、患者さんが毎回楽しみにして待っていること。
在宅の現場にはDrにはDrの職分。
リハ職にはリハ職の職分があります。
我々東洋医学屋さんには当然、東洋医学の職分があると考えています。
もっとひどいケースで改善された例は沢山あるので、もちろん痛み・しびれに対しての治療は続けますが、同時進行で四肢筋力の低下も止めなければなりません。
うつ傾向なので会話や安心感、治療の気持ちよさも必要です。
便秘で食欲が無ければ、そちらの対応も必要です。
要するに、全てに対して対応しなければならない場合が多いです。いわば全面主義。
でも、この考えは僕らだけしか持っていなければ、問題です。
一般的には在宅の現場で鍼灸マ師が求められるものは、リハビリだったり痛みやしびれの改善だったりします。
そもそも、高齢でかつ様々な医療(治療や制度)の限界から私達に依頼があるので、良くなるのには時間がかかります。
かといって、刺激を強くすることも危険です。
定期的に報告書は出しているのですが、我々の価値観をもっと知ってもらうには更なる工夫が必要だな、と反省しました。
リハ職の補完的役割として依頼があることが多いのですが、吾々もその現状に安穏とすることなく、鍼灸や東洋医学的視点の良さを知ってもらう必要があると思います。
そう、鍼灸・マッサージ・リハビリ・手技療法全てを駆使して、かつ体だけじゃない、精神的な所のフォローも考える。
そんな治療家が増えると、在宅現場での我々の評価も上がると思います。
by 五味哲也