途上国での鍼灸治療デビュー戦
ジャカルタの下町にある盲学校の一室。
床のタイルはめくりあがり、ドアは壊れ、風力MAXのまま壊れて自身の遠心力でいつプロペラが飛んでもおかしくない扇風機が変な音で天井で回っている。
ご近所のおばあちゃんの家族の依頼で膝痛の鍼灸治療することに・・・実は初めてこの地で鍼灸治療をする。
日本人の看板背負って、絶対に負けられないデビュー戦だ。
患者さん現る。足を引きずりながら、肥満した巨体をビッコ引きながら孫、子供、近所の子供を5,6名引き連れながら部屋に入る。
膝は0脚、関節の変形もある。1回で効果が出るだろうか、内心不安。
開きっぱなしのドアから入ってくる学校の先生や子供がベッドを取り囲み、この色の白い、インドネシア語が出来ない日本人と患者を興味深そうに見比べている。
しかも私の所作一つ一つに対して質問したり、勝手に道具を触ったりしている。正直「うざい」
問診から触診に移行し始めると、そのざわめきは誰かの「シー」という合図で静まる。
なんだか土気色だな、いやいや元から茶色いんだな。
舌を診る。なんと歯から歯茎、舌全てがまっ赤っ赤!
葉タバコ噛んだ後来ないでよ!
服装がワンピースな為めくり上げることができない。
イスラム女性なので膝までめくるのも内心ためらわれる。
治療終了後、こりゃ続けてもらわなきゃなぁと思いながら汗をふく。
ベッドから降りた患者の顔がパーっと笑顔になる。治療前の不安な顔から一転早口のインドネシア語で周りに話しかけている。周りの人たちもなんだか、感心している様子。
ベッド周囲を歩いてもらうと随分、歩き方が改善している。
一人の治療が5人分位疲れた。
治療のお礼に家に招待してもらい、ご飯をいただく。
野菜スープとご飯。
忘れられないインドネシアでのデビュー戦でした。
by 五味哲也